耳鼻科にて

 もう2ヶ月くらい前になる。朝、起きたら肩から頭までが妙に重苦しかった。しかも耳に圧迫感がある。まただ、と思った。


 数年前、同じ状態になった。症状はもっとひどく突発性難聴が疑われた。毎日点滴に通って無事完治した。この症状は1ヶ月もそのままにしておくと聞こえないままで固まってしまうということだった。


 5日たっても症状が治らないので耳鼻科に行った。聴力検査をすると右耳の低音の聞き取りが悪くなっていた。


「原因は分かりませんが、ストレスでしょう。自分で気がついていないだけで何か心の中にあるはずです。」と占いのようなことを言われた。

 
 処方された薬を飲んだ。1週間後には「治りました」という診断だった。


 しかしである。耳の状態は依然として良くなかった。左右で聞こえ方が違う。テレビの音も右耳だけで聞くと隣の部屋から聞こえてくるようだ、台所では水音や換気扇の低音が右耳に重くこもりイライラした。不安ではあるけれど、医師にはもう治ったから来なくていい、といわれたことだし、じっと様子を見ていた。


 しかし改善は感じられなかった。1ヵ月後、再び耳鼻科へ。


 「まだ聞こえ方が以前のように悪いのですが」


 「でも聴力検査の結果、正常ですよ。気にしすぎ、神経質なんじゃないですか?」


 「・ ・ ・ ・ ・」

 

       *  *  *


 その耳鼻科には計3回通った。医師の診察は計10分あったかどうか・・・。その医師は私を神経質でうるさい客だと決め付けたようだ。


 その理由が1回目に薬の説明を受けたとき、ステロイドは「使いたくない」と言ったからだと思う。だって他には聞かれたことに答えただけで、とにかくあまりしゃべってはいないからだ。それに彼はカルテを見ていて私のほうなどチラとしか見もしない、患者を観察しているとは思えなかった。


 でも3回目のときは私をじっと見て優しく、


「とにかく検査結果では正常です。ストレスと気にするのが一番良くない、心療内科に行ったらどうですか」


「?????」

 (もう少し患者の心配を聞いてくれてもいいんじゃないのかなぁ。私は大人だから、アンタの態度がストレスなんだよ、という言葉は胸に仕舞った。)


「もし気になるようなことがありましたら来て下さい」


「ずっと音がこもっている感じがあるのですが、どういうときに来たらいいのでしょう??」


「分からないならもう来なくていいです!!!!!」



        *  *  *
       

 
 それから半月、少しづつだがやっと症状は治まってきたようだ。なにわともあれ、良かった。だけどもしあのまま治らなくて数ヵ月後に診察を受けたとしたらどうだろう。医師の台詞はだいたい決まっている。


「なんでこんなになるまで放っておいたの?」



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