八百屋さん

 近所の八百屋さん、40代の息子さんと70代のお母さんがお店をやっている。そのお母さんがなかなか面白い。
 
 「ほうれん草ください」
 「あら、このほうれん草、新鮮で綺麗な色、美味しそうだね」


 「生姜をください」
 「生姜は身体に良いよ。それにこの生姜、良い形だよ。すりやすそうだね。」


 「りんご、ください」
 「見て、この赤い色。時期じゃなくても甘そうだよ」


 ぜったいに褒めるのだ。こちらも良い物が買えて良かったわ、という気になる。



 今日、餃子をしようと思って
 「キャベツをください」

 しかし店頭には無く、冷蔵庫にあった1個は少し古くて葉がシナシナになり始めていた。すると(あったわ、良かったという表情で)それを取り出してきて言った。
 「あ〜ら、このキャベツ、柔らくて美味しそうだよ」


 え〜、それは葉っぱから水分が抜けているんでしょ、とは思いつつ、餃子だから、まっ、いいか。


 するとそのお母さんも、そのコメントに少し無理があったと思ったのか、
 「あるだけいいんじゃないの。」
 



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