桜皮細工の下駄


        


 一度下駄を履いたら妙に気に入ってしまった。歩くたびにコッツンコッツンと地面にあたる音がいい。微妙な体の揺れも心地いい。


 もう30年も前の話だけれど、男子学生で大学でも下駄を履いている友達がいた。あるときコツコツと音がするほうを見たらその彼だった。それがサンフランシスコだったからビックリ。彼が「ホテルではいつもノイズイー(うるさい)と言われる」と言っていたのを思い出した。それでも履いていたのはやっぱり下駄に何か魅力があるのかもしれないな。


 実家で下駄の話をしていたら母が桜皮細工の下駄を出してきて「これを履きなさい」と言う。20年前、秋田に行ったときに母へのお土産に買って来たものだった。


「なんだ~、履かなかったの?」
答えはなかったけれど、それをもらってきた。


 桜の皮細工は小京都といわれ武家屋敷と桜で知られる角館が有名だ。茶筒、お盆、小鉢など繊細な工芸品だ。この下駄もフキの模様が綺麗。小物なら細工を楽しみながら大切に使えるけれど、下駄だから砂利道も雨降りでも歩く。勿体無くて履けないかもしれないな。とにかく綺麗なうちに記念撮影だ。




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