お茶席の手伝い
第一回目の茶道教室でのこと。お茶を頂くことのほかに袱紗(ふくさ)の扱い方やふすまの開け閉めなども教わった。つまりほんとの初心者のお稽古だ。
そこで次の週にそのお宅でお茶席が設けられるという話を聞いた。それでは洗い物など裏方のお手伝いでもさせてもらおうと、軽い気持ちからだった。
「お手伝いする事があったらおっしゃってください」
「ではお茶を運んでください。」
お茶席で正客にはその場でお茶を点てるが、つぎの方からは奥で茶を点て、それをお客人のところへ運ぶ。その運ぶ役目だった。とはいってもただ置いてくるだけではない。礼儀も知らない初心者が無謀なのだが、正式なお茶席ではないので間違ったていいのよ、と言っていただいた。
朝は9時半には現地に入る。着物を着ていくことを考えたら大忙しだ。先日のお稽古では着物と長襦袢が合っていなかったのか、手を伸ばすと袖口からちょっと襦袢が覗くのが気になっていた。だから前日は着物の点検をして小物もそろえた、お行儀が出来ない分着物の着方くらいは粗相の無いようにしよう。
桜の時期には桜をデザインした着物を来る方も多いけれど、私は菜の花かタンポポのイメージ。ちょっと黄土色がかった黄色地に白やオレンジのぼかしでうっすら花模様が描かれている。帯は葉っぱの色、鉄がかった落ち着いた緑色系。雨が降りそうだったので二部式の雨コートを着た。
お茶席では、お稽古と実際でだいぶ違った。お茶碗を畳のへりの向こうに置くか手前に置くか、なんて心配していたのに、いざ座敷に出てみたらお客人たちは畳のへりから遠い所に座っていた。畳の上にお茶碗を置くときも右手一本で差し出すのに、つい両手で出してしまう。
お手伝いといってもだいぶヘマをやらかしたのに、心に広い当家のご主人は感謝してくださる。
その話を30年来茶道を続けている友人に話すと
「良い経験をさせていただいたわね」と驚いていた。
たぶん茶道の世界では、たかが手伝いでも経験の無い者にはさせないのが常識なのかな、と思った。
ビギナーズ ラックという言葉があるが、「知らない」ということは図々しく、かくも強いものなのだろう。来年の今頃はその私も、少しは知識を得て今回のお茶席でのことを、恥ずかしかったなぁ、と思うに違いない。
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