再度 義太夫

 それにしても、最近着物姿の人を見かけることがとても多くなった。昨日はほんの短い時間に20人以上も見かけた。暑くて汗がでる日だったけれど、夏の着物を着ている人はいない。

 着物はどの時期に何を着るか、というのがあるからちょっと困る。透ける絽などの夏着物は大まかにいえば7,8月とせいぜい9月の1週目くらいまでだ。今年は暑いから夏物を着たいのだけど、今は単(ひとえ)の季節だ。これは裏の付いていない着物だ。

 この単衣の着物は夏着物の前後1か月くらいずつしか着られない。出番が少ない贅沢な着物だ。今これを無理してでも着ないと来年の6月まで出番がない。

 そこで無理やり着物で出かけだ。

 着物での外出は長く歩き回らない、という条件がつく。それにはちょうどいい。国立演芸場義太夫を聴きに行った。

 私の趣味の中に義太夫はないのだけれど、お付き合いで。でも聞いているとなかなか面白いものだ。昨日は4つの話を聞いた。

 その1つのストーリーはどこかで聞いたことがあった。

 ある女性には心に決めた人がいた。しかし父親に結婚を強要されそれがイヤで家を出た。しかし皮肉にも心に決めた人と父親が薦める男は同一人物だったのだ。それを知らずに放浪するうちに目が見えなくなった。 
 ある日、旅館で働く彼女のもとに客としてその思う男がやって来た。彼女には男が見えない。男は事情を理解したが旅立たなくてはならなかった。男が去った後、彼女はその男の素性を知り、泣きながら追いかける・・・・。