着物姿の若いお母さん

 洗濯物を干そうとベランダに出ようとした時、子供の泣き叫ぶ声が聞こえた。
 「うるさいな〜」
 下を覗くと、ねっころがって駄々をこねている4〜5歳の女の子がいた。お父さんがしゃがみ込んでなだめていた。そばには2歳くらいの男の子とお母さん。

 珍しくもない親子連れの光景だ。しかしそのお母さん、小さな子供のいるのに着物を、それもレンガ色の落ち着いた色合いのものを綺麗に着こなしていた。

 女の子は泣き止み、4人はどこかのお宅にお呼ばれしているのだろう。路地の奥へ歩いていった。

 着物を着ている人はとても珍しい。しかし近所には華道や茶道の教室があるらしく、時々着物を着た人たちと出くわすことがある。しかし素敵に着こなしている人は案外少ない。Gパンはいて歩いているような人、裾がはだけたり、襟元がひどく緩んでいる人は正直いただけない。

 しかしそのお母さんは着物のセンスも着付けも良かった。そういう人を見ると私もちゃんと着付けてお出かけしなくちゃ、と思う。

 買い物に出た時、向こうの方にグレイの着物を着た人が見えた。地味だけど帯との色合いも綺麗だ。今日は良く着物の人を見る。

 そう思ってすれ違おうとしたとき、パンフレットを渡された。着物教室のものだった。



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