下駄の裏

 母からもらってきた桜皮細工の下駄。歩くときのコツンコツンという音は好きなのだけど、アスファルト道路やビルの中はその音がうるさいし、底が減るのを防ぐためにも底にゴムを張りたいと思った。

 
 思い出したのが神楽坂。そこは最近始まった、倉本聰脚本のテレビドラマ「拝啓、父上様」の舞台。番組の方は見ていないのだけれど、この街は古い伝統が残る花柳界。ここにある下駄や草履、バックなどをう売る老舗は、正直いって値段は高い。
 

 下駄にゴムを張るだけなんてやってくれるのだろうか?


 その店に行く途中で若い、子連れの女性6人とすれ違った。子供は赤ん坊から2〜3歳くらい、だからその女性たちもだいぶ若いと思われた。それが着物姿だった。大正ロマンのような、竹久夢二の絵にでてきそうな、古めかしい着物ばかりなのだ。思わず見とれてしまった。


 ベビーカーを押す人、子供の手を引く人、帯の上に赤ん坊を背負い紐で負ぶっている人。若いのに、おまけに団体で、子連れで着物、いったいどんな人たちなのだろう? さすがにこれが神楽坂なのだろうか?

     
        


 その老舗でのこと。やはり頼んでみるものだ。ちゃんとやってくれた。実はゴムを糊で張るだけかと思ったのだが、ピンを打ち付けての丁寧な仕事だった。ついでに鼻緒も私には合わないからと調節してくれた。


 鼻緒がきつくても履きなれると緩んでくるのかと思っていたが、そういうものではないらしい。初めから足に合わせないとあとで痛くて泣くことになる。分かりきっていることとはいえ、料金のことを考えるとつい安いほうを選んでしまいそうになるけれど、プロに言われると納得する。


 それと下駄の履き方。試し履きをしていたら、「そんなに足を突っ込まない」と注意された。私は指の間に鼻緒が密着するまで足を入れていた。正しい履き方はそこから足を少し戻すのだそうだ。私ったら、履き方も知らなかった。


 ここでのゴム張りと鼻緒直しの料金は、安〜い下駄なら買えるかもしれないけれど、値段だけのことはきっとあったと思う。


     ++++++++++++++

          「私の時間」 http://fukurouribon.hp.infoseek.co.jp