目立つ

 朝、ゴミを出しに外に出ました。そのとき8メートル先に目が吸い寄せられました。

 男性と女性と犬1匹の三人連れ。人間2人と犬1匹ではないんですよ。

 お洒落な、多分家族です。朝の散歩といったところでしょうか。ご主人は芸術家ぽっく長い髪を後ろで束ね、黒のダウンジャケットに黒のジャージ姿です。

 奥さんはやはり黒でふくらはぎまであるコートに黒のパンツ。

 そして極め付きは黒の犬、大きくて何しろ足が長い。あとで調べたらサルーキという品種に似ていました。古くから鹿狩りに使われていたそうで、聖書の中に「犬」が出てくればサルーキを意味すると言われるのだそうです。とにかくそんな感じの贅肉がなくて綺麗なシルエットです。とにかく足が長かった。

 全員黒なのです。犬の足が長かったせいか、3人とも、ほんとはそうでもなかったのだけれど、犬の長さに引きずられて全員とても細長く見えた。見ているうちにだんだんとジャコメッティの彫刻になって来ました。現代的でお洒落な家族です。

 この家族は誰が、どこで見ても「あぁ、○○さんだ」って分かります。カッコイイなぁ!人に見られるのを意識している俳優さんみたい。

「猫を抱いて像と泳ぐ」

「猫を抱いて像と泳ぐ」(小川洋子著)は、いったいなんのこっちゃ?というタイトルですけど、タイトルどおりの本でした。

 350ページくらいの小説なのに読むのに1週間かかりました。

 主人公がチェス盤の下にもぐってチェスをする話です。本人は駒の動きを見ないのだけど、チェス盤の裏から駒の音を聞き、盤の上で起こっている様を写し見るのです。そこには素晴らしい詩があるといいます。
 
 チェスは知りません。でもこちらにも駒が動く音が聞こえてきます。そして静寂が続く。それが不思議で、だから読み進めるのが勿体無かったこともありました。

 主人公は何も望まずひたすらチェスの相手を勤めます。相手の駒と調和して最強でなくて最善の手を探ります。「心の底から上手くいってると感じるのは相手の駒の力がこっちの陣営でこだまして、自分の駒の力と響き合う時。盤の上では正しいことが行われているという気持ちになれるんだ」と主人公は思います。

 ただただ清冽な空気が、美しいものだけが伝わってくるのです。涙で先が読めなかった。最後は声を出して泣きました。

 それにしても筆者はなんという筆力なのでしょう。「博士の愛した数式」のピュアさにも魅了されました。

 本を読みながら、なんとなく魚の小骨が喉に引っかかっているような気がしていました。それは何だろう?

 主人公はただひたすらにチェスという行動をしています。勝つためでなく、相手に感謝されたいからでもなく淡々とチェスをするのです。そのことが対戦した相手との美しい軌跡を盤の上に描くのです。

 慾も無くただ行動することがこんなにも美しいものなのですね。



 いらさんがこの本を紹介してくれました。
いらさんは私の図書館司書。お勧め本にくるいは無いです。ありがとう(^0^)/




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後日談

 実は、マンションの入り口にいたおばさんには後日談がありました。

 翌朝、気になって1階に下りてみました。するとおばあさんと唯一と思われる手荷物の紙袋が消えていました。

 「今、顔を洗っていたの」と言って帰ってくるのではないかと思われる寝床跡がそこに残っていました。新聞を敷いたその上にビニールのプチプチが寝ていた時の乱れをそのままに、毛布だけはアバウトにたたまれていました。

 ・・・・・・??????

 しばらくそこに立っていました。

 私、おばあさんに失礼なことしたのかしら? だって毛布にすぐ包まっていたよね?暖かかったでしょ?それなのに毛布いらないの?今夜も寒いのに大丈夫?これからどうするの?

 もしかして毛布を持っていっては悪いからと、遠慮して置いて行ったのかもしれない。いえいえ、それならもっと綺麗にたたんで行くでしょ?

 それより持ち物は紙袋ひとつだけ、「毛布なんか格好悪くて持って歩けないわよ」と置いていったのかもしれない。

 きっとあの人、人の好意を受けるのがイヤで、そのかたくなな性格が災いして家を無くしたのかも知れないなぁ。昔はお洒落でプライドが高くて、だから今の身なりもちょっとだけ小奇麗で、もちろん毛布など自分のスタイルに反するから寒くても持っては歩けない。武士は食わねど高楊枝といったところでしょうか。余計な想像をいたしました。

 人は基本的には何を考えているか分からない。こちらがきっとこう思っているに違いないと勝手に解釈してのお節介はただの迷惑なのですよね。

 電車で座っていて、目の前にお年寄りが立ちました。こちらも疲れて眠いけど頑張って席を譲ろう。しかし「いいえ結構です」なんてビシット言われると結構バツが悪いです。

 駅で白い杖ついた目が不自由な人が階段の手すりを一生懸命探っていました。だから「そこにエレベーターがありますよ」と教えました。すると「いえ結構、健康のために階段を使うことにしています。」 

 あ〜、また言われちゃいました。

 だから知らない人に声をかけること、ちょっと躊躇うのです。

 でも知り合いに言われました。

 「いいじゃないの。自己満足で」

 そうですよね、この世知辛い世の中、お節介くらい焼いたほうがいいよね、と思ったのでした。



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玄関に不況の影

 夫が飲んで帰ってきました。昨夜12時少し前でした。

何やら小声でブツブツと
「ばあさんが新聞・・・・・」とモソモソ言ってます。。

 こっちは「はぁ〜?????」って感じです。新聞でもポストに入れていたのかと思ったのです。しかし真相は、おばあさんみたいな人がマンションのエントランスで新聞紙を敷いて寝ているということだったのです。

 「顔は見えなかったけど小奇麗だった」

 そんなところにいたら寒くて大変なことになるから私に何とかしろということなのです。 夫は妙に年寄り子供には優しい。見るに見かねたのです。

 私は仕方ないので、ダウンジャケットを羽織り一階に降りました。小奇麗な人ならお嫁さんと喧嘩して家にいられなくなったのかしら?

 確かにエントランスを入ったところに新聞紙を広げてそこに亀のようにうずくまっている人がいました。

 「そこは下が石だから寒いでしょ。家はどこですか?」

 その人はゆっくり顔を上げました。おばあさんは寒いからでしょう、頭に布を巻いていました。夫が小奇麗だと言ったのは、冬にしてはすごく薄手ですが、あまり明るくないところでは汚れてはいなかったからです。

 しかしその顔には、天気図だったら西高東低の冬型を思わせる深くはっきりとして密集した皺、皺、皺、しかも汚れていました。身体を動かしたせいで独特の臭いがしてきました。その人が家は無いと首を振る前に、ホームレスであることが分かりました。

 「いつもどこで寝ているの?」

 「向こうのスーパー、でも警察が来て居られなくなったから」

 私は部屋に戻り夫に報告すると、「何か持っていってやれ」、というのです。私は今着ているダウンを置いてこようかと言いました。だってコートを着ていなかったのですから。

 「それはお前が新しいのを買いたいからだろう」

 (半分、見透かされました。)

 そして自分の毛布と下に敷くためにビニールのプチプチのシートを出してきました。

 私は毛布なら私のほうがボロイからそっちにしよう、という言葉は飲み込みました、だってお前はセコイと言われるに決まってますから。

 エントランスに戻ると、おばあさんは体勢を変えて足や手を何度も何度も摩っていました。

「寒いでしょ?毛布使う?」

 するとすぐに、そしてものすっごく軽い感じで

 「そぉーねぇ〜〜」と応え、すぐに差し出したプチプチを腰の下に敷き毛布で身を包みました。

 夫は「自己満足かもしれないけどな〜」と言ったけれど少しは安心したようでした。

 ガード下や公園や地下道にはたくさん同様の人がいます。見ても知っていても通り過ぎていましたが、自分が住むマンションにやってきました。現代の不況や不安が足元までやって来た気がしました。



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洋ナシ

 漬物があるだけでご飯が美味しくなりますね。浅漬けなどあっさりしたのが好みなんですけど、キムチは別、好きなんです。

 宅配のキムチなどというのも頼んだことがありましたし、お手軽にスーパーなどでキムチ漬けを買ってきたこともあるんです。

 でも少し前に、キムチに何やら異物が混入していたということが立て続けにニュースで報じられてからはやたらなところでは買わないようにしています。買ったものの方が簡単でしかも美味しいのですけどね。

 もっと安心・安全を追求して今はもっぱら自家製。

 昔、アミの塩辛や唐辛子など材料を揃えて漬けたことがありましたが、見事に失敗、それ以来キムチの素(添加物の無いもの)を使っています。

 白菜を半日、天日に干して塩漬け、十分に水が出てしんなりしたら漬け込み開始です。白菜をさっと洗って塩気を取り絞ります。我が家ではあまり量を多く漬けないし、酸っぱくなるのがイヤなのです。2〜3日の食べきり分です。それにすぐ食べたいから適当な大きさに切っておきます。

 そしてキムチの素を混ぜるわけですが、そこに洋ナシをすって入れてます。キムチの素だけだと尖った味ですが、洋ナシでとてもマイルドに、そして味に深みが出ます。ヨウナシは用なしではなくて実はヨウアリでした。なんちゃってm(__)m

 これは以前やっていた韓国ドラマの「チャングムの誓い」でよく料理に梨を入れていたのを見てマネッコしてみました。



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迎春

 明けましておめでとうございます。

 本年もどうぞよろしくお願いします。

 今年はサボらず更新を目指したい(ウ〜〜〜〜、言っちゃった。大丈夫かな?)

      *

 年末年始にかけて田舎に行ってきました。向こうに着いた翌日から雪が降り続き、寒いったらなかったです。車で行ったのですが、除雪がされていないとどこが道なのか、どこまでが道なのか分からないのですね。怖い思いをしました。

 帰りは山を越えると少しは近いのですけど、遠回りして除雪されている道を通ってきました。

 事故渋滞もありましたが、高速1000円の恩恵を受け、しかし浮いた分はパーキングで買い物しすぎてチャラでした。


      *

 怪我で入院中の義父は、話しているととても元気なのですけど、お腹から足の先まで縛られたように痛くて痺れているのだそうです。

 義父は腰から下が動きません。足を切断した人が足の指が痛いというらしいですが、それと同じらしいです。

 今の病院は長くても今月いっぱいしかいられないので、次に転院できる病院をお願いしてきました。





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